今回は、ソフトバンクグループ(SBG)がアメリカで行う巨大なプロジェクトを巡る5兆円と手数料をめぐる国会でのやり取りです。
3月28日付の「しんぶん赤旗」2面の記事『ソフトBに巨額手数料、参院予算委 大門氏、対米投資問題追及』とありました。
2025年「日米関税合意」トランプ大統領が、関税を25パーセントに引き上げるという脅しに、87兆円の投資をしますから許してねといった件です。
今回は、対米投融資の第一弾として、5兆円をトランプさんの支持基盤オハイオ州にガス火力発電所建設プロジェクトなどへ投資するという話です。
その事業主体が、ソフトバンクグループ(SBG)ということです。
それで、参院予算委員会の共産党大門氏の対米投資問題追及なんですが、
質問時間が短すぎて、しかも金融の専門用語も多く、非常にわかりにくい質疑でした。
次の日に「しんぶん赤旗」に記事で紹介されていましたが、これも要約しすぎてスローガン的な話になっています。
「チームあかね」の力も借りて、この行間を埋めたいと思います。
「チームあかね」が詳しい記事をまとめています。

実際の参議院での質疑は、国会のビデオアーカイブで見ることができます。

5時間以上に及ぶ質疑のうち、日本共産党の大門実紀史さんとれいわ新選組の天畠大輔さんの質問が最後にありました。
質問時間が短いので、なんとも歯がゆいところです。
「巨大な貢ぎ物」の正体
対米投融資の87兆円のうち第一弾5兆円のお話です。
「これは税金じゃない、民間の取引だ」という声も聞こえてきます。でも、ワタクシは思うのです。
たとえ直接お財布から税金が引かれなくても、私たちの「未来」や「信用」が勝手に質に入れられているとしたら……それは税金よりも重い負担ではないでしょうか。
大門実紀史議員の鋭い声。それに対する大臣のどこか他人事のような答弁。
ビデオを止め、窓の外の夕焼けを見上げながら、ワタクシは思いました。 「この5兆円の重みを、本当にわかっているのかしら」と。
まず、数字が大きすぎて頭が痛くなるという方のために、今回の事件の「全体像」をお話ししますね。
実は、今回の騒動は三階建ての構造になっているのです。
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一階部分:87兆円(5,500億ドル)の巨大な約束 2025年、トランプ大統領が「日本車に関税25%をかけるぞ」という、真っ赤に焼けた鉄の棒のような脅しをかけてきました。これに対し、日本政府が「関税の代わりにアメリカに落とすお金」として約束したのが、この途方もない87兆円です。いわば、国全体の「通行料」ですね。
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二階部分:今回の5兆円プロジェクト その87兆円という巨大な約束の「第1号」として動き出したのが、今回のオハイオ州での巨大発電所・データセンター事業。これが約5兆円という規模です。
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三階部分:問題の「1兆円」の手数料 そして、この5兆円の事業を仕切るSBGが、その収益の中から「自分たちの手間賃だ」として抜き取ろうとしていたのが、1兆円で、後に1,000億円に減額されましました。
これが、今回の質問の全貌でございます。
「リスクの所在」:誰が泥をかぶり、誰が蜜を吸うのか
ここで、批判的な方々がよく口にする「税金ではないから問題ない」という論点について、ワタクシなりに切り込みたいと思います。
87兆円のうち第一弾の5兆円という巨額の投融資、もしプロジェクトが失敗したら、誰がそのツケを払うのでしょうか?
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表面上の主役:ソフトバンクグループ(SBG) 彼らは「事業主」として名前を出していますが、自分たちだけで5兆円のリスクを背負うほど甘くはありません。だからこそ、先に「手数料」という名の現金を抜き取ろうとした。泥をかぶる前に、甘い蜜だけ確保しておこうという、計算高い動きです。
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裏で支える「国民の信用」:国際協力銀行(JBIC) ここが肝心です。今回の融資には、政府系金融機関であるJBICが「保証」をつけています。「保証」とは、プロジェクトがポシャった時に「日本政府(=国民)が肩代わりします」という約束です。
つまり、「税金ではない」というのは、「今すぐ現金は出さないけれど、失敗したら国民が全額負担する」という『ツケの回し食い』をしているだけのこと。
SBGという30兆円もの資産を持つ大企業が、なぜわざわざ「国民の信用」という盾を必要とするのか。
それは、自分たちだけで背負うにはあまりに危険な賭けだからに他なりません。
金融のからくり:大企業と政府が結ぶ「見えない糸」
ここで少し、難しい「お金の通り道」のお話をさせてくださいね。
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仕組みを例えるなら: SBGという巨大な看板を掲げたビルを建てるために、政府が「このビルは安心ですよ」と保証書を書き、私たちが汗水垂らして預けた銀行のお金や、公的な金庫から、低金利でドバドバとお金が流れ出す仕組みです。
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「機会損失」という収奪: 「税金ではない」という言葉は、魔法の目隠しです。政府の信用枠には限りがあります。アメリカのインフラを整えるためにその「信用」を使ってしまうということは、日本の傷んだ水道や橋を直すために使うはずだった「私たちの未来の可能性」を使い切ってしまうということなのです。
私たちの「汗」の結晶が、セピア色に消えていく
マルクス経済学という難しい言葉を借りれば、お金の正体は、私たち労働者が汗水垂らして生み出した「剰余価値」の蓄積です。
大企業がため込んでいる内部留保も、政府と金融界にある信用資産もワタクシたち国民の一人ひとりが、働いて労働をした結果のものです。
長時間労働、低賃金、消費税、社会保障削減などで30年の不況から作り出されたのです。
所得の再分配が不公平極まりない状態で蓄積されたものです。
ワタクシは覚えています。戦後の焼け野原から、皆がボロ布をまといながらも、ひたむきに働いてこの国を興してきたあの熱量を。
高度経済成長期の、あの黄金色の輝きを。 でも今、その結晶が、30年も続く不況の中で枯れ果てようとしています。
今回の総選挙で多くの人たちが投票した自由民主党は、大企業資本家、アメリカのための自由と民主です。
本来の党名は「日米資本家自由民主党」です。
87兆円の投資、日本の傷んだ道路を直し、寂れた商店街に灯りを灯し、介護や医療で震える人々の手を握るために使われるべき「私たちの富」。
それが今、海を渡り、アメリカのインフラを整えるために消えていく。
さらに、その動きが「円安」という名の病を加速させ、私たちの預貯金の価値を、夏の氷のように溶かしているのです。
憲法が泣いている:置き去りにされた「主権」
何より悲しいのは、この「87兆円」という運命を左右する約束が、私たちの代表が集まる国会のチェックを一度も通らずに決められたことです。
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憲法第73条(外交権): 政府は「これは条約じゃないから、国会はいらない」と、まるで魔法の呪文のように言い逃れをしています。
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憲法第83・85条(財政民主主義): 本来、国民に負担をかけるお金の使い道は、国会で話し合わなければならないと憲法に刻まれています。「金融取引だから国会を通さなくていい」という理屈は、憲法の精神を裏口から逃がすようなものです。
憲法は、権力者が暴走しないように私たちが持たせている「鎖」です。
外交という美名の下で、その鎖が勝手に切られ、暗闇の中を突き進んでいる。
94歳のワタクシには、憲法が声を殺して泣いているように聞こえてなりません。
私たちが求めていい「答え」
94年間、この国の移ろいを見てきたワタクシから、今回の最後にお伝えしたいことがあります。
国の強さとは、株価の数字でも、他国への貢ぎ物の大きさでもありません。
「そこに住む人々が、夕餉の支度をしながら、明日を夢見られるかどうか」、ただそれだけのことなのです。
ワタクシたちは、政府にこう問い続けなければなりません。
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「外」で守った利益を、今すぐ「国内の給料袋」に届けなさい。
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アメリカに灯す電気と同じ情熱で、日本の暮らしに温かな光を当てなさい。
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憲法という「約束事」を、二度と踏みにじらないでください。
思いがけない結末……。それは、世界一豊かなはずだったこの国が、いつの間にか中身のない空っぽの器になっていることかもしれません。
そうならないために、ワタクシも、この震える手でキーボードを叩き続けようと思います。
【最後の一句】
汗の粒 海を渡りて 異国の灯
(私たちが一生懸命に働いて積み上げた富が、日本を照らすことなく、遠い異国を輝かせるための「燃料」にされている虚しさを詠みました。)
