チームあかねの詳し記事はこちらです。

イラン停戦の協議が開始されました。その行方が気になるところです。
協議の前提になるイスラエルの基本的な立ち位置、考え方、理念を理解していないとその行方は、不安で仕方がありません。
アメリカとイスラエルの関係でイスラエルロビーという圧力団体のお話をしました。

今回は、イスラエルがもつ基本思想、中東での立ち位置を解説したいと思います。
複雑化する中東の戦争について理解するときに知っておかなければならないのが、「大イスラエル構想」という言葉です。
「チームあかね」が、ちょうどいいものをみつけたのでご紹介します。
カタールの国際メディア・アルジャジーラのポッドキャスト『ザ・テイク』(2026年3月30日放送)です。
英語なので息子に訳してもらい、詳しい記事を作成してくれました。

今日はそれをもとに、ワタクシなりの言葉で皆さんにお伝えしたいと思います。
「大イスラエル」とは・地図の上に引かれた、古代の夢

「大イスラエル構想(Greater Israel)」とは何か、まず地図をイメージしてみてください。
エジプトを流れるナイル川から、イラクを流れるユーフラテス川まで。
その間にある中東の広大な土地、全部をイスラエルの「正当な国境」と見なす。
そういう領土拡張主義のイデオロギーです。
現在のイスラエルの面積は約2万2千平方キロメートル、ちょうど四国ほどの大きさです。
ところがナイル川からユーフラテス川の間となると、その数十倍もの土地になります。
日本列島がすっぽり入ってしまうくらいの広さです。
この考えの起源は19世紀末、政治的シオニズムの父と言われるテオドール・ヘルツルが日記に書き残した「エジプトの川からユーフラテス川まで」という一文。
そして、その根っこには、旧約聖書の創世記第15章18節、神様がアブラハムに「ナイルからユーフラテスの間の土地を与える」と約束した、という聖書の物語があります。
聖書の言葉が、現代の軍事行動の「根拠」になっている。
ワタクシには、それがどこか昭和の「大東亜共栄圏」という大義名分と重なって見えて、ゾッとするのです。
シオニズムとは何か——まず基本をおさえておきましょう
少し立ち止まって、「シオニズム」という言葉を整理しておきますね。
19世紀末のヨーロッパでは、ユダヤ人への迫害が激しく続いていました。
「どこにも安住の地がない」そんな絶望の中から生まれたのが、「祖先の地パレスチナに、ユダヤ人の民族国家を建てよう」というシオニズム運動です。
エルサレムのシオンの丘が名前の由来です。
1897年、ヘルツルがスイスのバーゼルで第1回シオニスト会議を開催。
1917年にはイギリスが「バルフォア宣言」でパレスチナにおけるユダヤ人国家樹立を支持し、ついに1948年、イスラエルが建国されました。
これ自体は、迫害を逃れようとした人々の切実な願いから始まったものです。
ところが問題は、そこにすでに暮らしていたパレスチナの人々との間に生まれた、深い深い矛盾でした。
「過激派の夢」から「政権の公式目標」へ——恐ろしい変化
かつてこの「大イスラエル構想」は、一部の極端な人たちが唱える非現実的な夢と見なされていました。
ところが今は違います。
ネタニヤフ首相は「自分は歴史的・精神的な使命を帯びている」と公言し、スモトリッチ財務大臣はカメラの前で「イスラエルの国境をダマスカス(シリアの首都)まで拡大する」と語っています。
さらに驚くべきことに、野党のラピド党首でさえもこの計画に異議を唱えないほど、イスラエルの政治全体が右方向に傾いています。
これを日本に例えるならば、かつて「軍国主義者の暴論」と思われていた考えが、いつの間にか閣議決定の文書に書き込まれていくような。
そういう変化の恐ろしさを、ワタクシは94年の歴史の中で知っています。
転機は1967年——「やっても罰せられない」という成功体験
この構想が絵空事から「現実の野心」へと変わった決定的な出来事が、1967年の第三次中東戦争(六日戦争)です。
わずか6日間でヨルダン川西岸、ガザ、ゴラン高原、シナイ半島を一挙に占領したイスラエル。
右派の人々はここから一つの「教訓」を得ました。
「武力で領土を拡大しても、国際社会から深刻な制裁を受けない」
これが成功体験として刷り込まれたのです。
現在、ヨルダン川西岸と東エルサレムには約74万人のイスラエル人入植者が居住しており、国際法上は違法とされる入植地問題が続いているのです。
74万人——東京の新宿区と渋谷区を合わせたくらいの人口が、他の人の土地に「合法」のように移り住んでいる。
さらに興味深いことに、その初期の入植地を建設したのは、右派ではなくイスラエルの「左派」政権でした。「安全保障のため」という名目で。
ここには何か、普遍的な警告が込められていると思いませんか。
「住民なき土地」の追求——ガザで起きていることの本質
2023年10月7日、ガザ地区のハマスによるイスラエルへの攻撃が起きました。
この出来事が、大イスラエル構想を信奉する現政権に「武力行使の白紙委任状」を与えることになったと、アルジャジーラは指摘しています。
この「大イスラエル構想」の核心は、単なる領土の広さではありません。
「非ユダヤ人を許容しない、住民なき土地の獲得」これが本質です。
ガザでは、大規模な破壊と住民の排除が行われました。
そしてこの「ガザ・モデル」は今、レバノン南部にも適用されようとしています。
リタニ川までの地域(レバノン領土の約10分の1)から住民を強制排除し、家屋を破壊して「人が帰れない荒れ地」に変えた上で、国境を押し広げようとしているのです。
色で言うならば、かつて緑や金色に輝いていたその土地が、灰色の瓦礫の色に塗り替えられていく。
ワタクシが終戦直後に見た焼け野原の光景が、頭の中でじわじわと重なります。
「今しかない」という暴走——不処罰がもたらすもの
なぜイスラエルの指導者たちは、これほど公然と「大イスラエル構想」を語れるのか。
答えは一言です。アメリカの無条件支援です。
バイデン政権もトランプ政権も、イスラエルの軍事行動を批判せず、非難もせず。
トランプ政権が駐イスラエル米大使に指名したマイク・ハッカビーは、イスラエルによる中東接収を容認する発言さえしています。
前回ご紹介した「イスラエルロビー」と動きと結びつきます。

そしてイスラエルの指導者たちは今この瞬間を、「ホワイトハウスとイデオロギーが一致している千載一遇のチャンス」と見ています。
さらに恐ろしいのは、すでに国際司法裁判所(ICJ)でジェノサイドの罪に問われ、ネタニヤフ首相自身も国際刑事裁判所(ICC)から戦争犯罪で逮捕状を請求されている状況の中で、
「もう後戻りできないなら、最後までやり遂げよう」という極端な論理が働いていることです。
追い詰められたネズミが猫に噛みつく、そんな危険な心理が、核兵器を持つ国の指導者の頭の中に宿っているとしたら。
世界が安定するはずがありません。
周辺国への影響——中東だけでは済まない話
大イスラエル構想が実現されていくと、どんなことが起きるのか。数字で見てみましょう。
2023年10月以降、ガザ地区では約190万人が避難・移動を余儀なくされ、パレスチナ人コミュニティ全体の多くが一時的に故郷を離れざるを得ない状態にあります。
この状況は、長期にわたるパレスチナ難民問題の深刻さをさらに高めていると考えられます。
中東全域が戦乱に巻き込まれれば、1970年代のオイルショックのような世界的な経済危機を招く可能性もあると専門家は警告しています。
あの頃、日本でもトイレットペーパーが店頭から消えましたね。
ワタクシにはよく覚えがあります。
そんな規模の混乱が、今度はもっと深刻な形で来るかもしれない。
そしてヨーロッパなどかつての同盟国も、この拡張政策の「莫大なコスト」に直面し、イスラエルとの関係を見直さざるを得なくなると指摘されています。
アメリカの中の「分断」——若者たちが変わり始めている
しかし希望の光もあります。
アメリカ国内では、ユダヤ人社会の中でさえ「Jストリート」や「アメリカンズ・フォー・ピース・ナウ」といった
リベラルな団体が入植活動を強く批判し、パレスチナとの二国家共存を訴えています。
そして何より注目すべきは、若い世代の意識の変化です。
2026年3月の調査では、18歳から34歳の若年層のうち、イスラエルを肯定的に見る人はわずか13%。否定的な見方は63%。
比べてみてください、わずか数年前まで、アメリカでイスラエルへの批判は「タブー」に近いものがありました。
それがたった数年で、ここまで変わった。
歴史は動いています。若い人たちが変えているのです。
ワタクシはその事実に、少しだけ、ほんの少しだけ、希望を感じます。
おわりに——94歳が中東を語る理由
「あかねさん、なんで中東のことなんか書くの?」と言われそうです。
でもね、ワタクシは思うのです。
94年生きてきて、一番後悔していることの一つは「知らなかった」ことです。
戦争の本当の意味を、誰かが教えてくれていたら、若い頃のワタクシは何かが変わっていたかもしれない。
ガザの子どもたちの顔を見るたびに、ワタクシの胸は痛みます。
あの子たちは「大イスラエル構想」も「シオニズム」も知らない。
ただ、家と家族を失っただけです。
知ることが、はじめの一歩。そう信じて、今日も独り言を続けます。
最後の一句
砂の上 千年の夢 拭えぬか
ナイルの砂もユーフラテスの砂も、どんな旗を立てても、砂は砂のまま。千年の夢は、人の血を吸っても消えることなく。遠い空を仰いで呟く一句です。

