(チームあかね編)
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2026年米中間選挙の歴史的位相と惨敗したトランプ政権
2026年11月3日に執り行われた米国中間選挙は、単なる中間期の議会勢力図の更新にとどまらず、第2次トランプ政権の強権的な政治手法、無謀な対イラン軍事介入、そして庶民の生活を圧迫する新自由主義的経済政策に対する民衆の巨きな審判の場となった。
2024年の大統領選挙においてトランプ氏を再選へと押し上げた有権者連合はわずか2年で瓦解し、有権者は強権政治と生活苦に対して歴史的な「NO」を突きつけた。
開票結果は野党・民主党が上下両院で圧倒的多数を獲得する「ブルー・ツナミ(青い津波)」の到来を告げている。
上院では民主党が54議席を確定させ、共和党は44議席にとどまった。
未定の2議席(アラスカ州とミシシッピ州)も超僅差の激戦が続いており、特にミシシッピ州で民主党のスコット・コロン氏が接戦を制せば、南北戦争後の再建期以来初となる同州選出の黒人連邦上院議員が誕生するという歴史的文脈を孕んでいる。
下院でも民主党は240〜258議席規模に達する大勝を収め(共和党は147〜177議席)、全国得票率における民主党のリード率は約13ポイントに達した。
これは少なくとも1976年以来、最大規模の勝利幅である。
さらに特筆すべきは、テキサス州(38年ぶりの民主党上院議席獲得および知事選勝利)、カンザス州(1932年の世界大恐慌期以来94年ぶりの民主党上院議席獲得)、ジョージア州(史上初の黒人女性州知事となるキーシャ・ランス・ボトムズ氏の誕生)、アラスカ州、アイオワ州、メイン州といった共和党の伝統的「牙城」が相次いで崩壊した構造変化である。
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議会・選挙区分 |
民主党(獲得・予測) |
共和党(獲得・予測) |
構造的変化のポイント |
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連邦上院(定数100) |
54議席 |
44議席 |
テキサス、カンザス、メイン、アイオワ等の牙城を奪還(※残り2議席[AK, MS]は未定・激戦) |
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連邦下院(定数435) |
240〜258議席 |
147〜177議席 |
全国得票差約13ポイント。過去半世紀で最大規模の得票差 |
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主要州知事選 |
ジョージア、テキサス、オハイオ等で勝利 |
伝統的基盤の失墜 |
ジョージア州で史上初の黒人女性州知事(キーシャ・ランス・ボトムズ氏)誕生、テキサスでヒノホサ氏勝利 |
この歴史的大勝が意味する構造的変化は、単なる「政権与党の落選」という周期的な現象を超えている。
巨額の政治資金やゲリマンダー(不当な選挙区画定)の障壁を跳ね返し、ヒスパニック系(D+28ポイント)、アジア系(D+17)、白人(D+13)、黒人(D+9)と、全米の全人口統計群が揃って左派・民主党方向へ著しく旋回した事実は、トランプ時代の終わりの始まりを象徴している。
「D+数字」は、民主党(Democrat)が共和党(Republican)より何ポイント多いかを示す支持差の表記です。Dは民主党、Rは共和党を表し、数字は両党の得票率(または支持率)の差です。
読み方
D+28ポイント=民主党が共和党より28ポイント多く支持された
R+10ポイント=共和党が民主党より10ポイント多く支持された
EVEN=両党がほぼ同数(差がない)
たとえば、民主党65%・共和党37%なら差は28ポイントなので「D+28」と表記します。
超富裕層の資金力に依存した金権政治に対し、庶民の生活苦と反戦・人権擁護を訴える草の根運動が勝利したことで、米国の統治構造と民衆の政治意識には不可逆的な地殻変動が生じた。
こうした歴史的転換がグローバル社会に与えた衝撃を正しく把握するため、世界各国の報道機関が本選挙結果をどのように捉え、分析しているのかを比較・検証する。
世界各国の報道機関が捉えた中間選挙:視点と論調の比較分析
2026年米中間選挙の結果は、米国内の内政問題にとどまらず、中東情勢、国際通商、同盟関係を含むグローバルな政治・経済秩序に激震を与えた。世界各地の主要メディアは、それぞれの立脚点からこの結果を報じ、トランプ政権の弱体化が自国および国際社会にもたらす波紋を多角的に分析している。
以下の比較表は、各報道機関の視点と核心メッセージを統合・整理したものである。
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メディア名 |
主な報道視点 |
核心メッセージと分析内容 |
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しんぶん赤旗 |
草の根市民運動、DSA(アメリカ民主社会主義者)の躍進、平和と生活の重視 |
「NO KINGS(王はいらない)」デモをはじめとする市民運動やDSAの奮闘を重視。無謀なイラン戦争と物価高に対する民衆の怒りが、金権政治を打ち破ったと分析。PRRI調査をもとに若年層の意識変化(48%が社会主義要素導入を支持)を着目。 |
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The New York Times (NYT) |
「トランプ時代の終わりの始まり」、全人口統計群の左派シフト、市場影響 |
ヒスパニック(D+28)をはじめ全属性での左派傾斜を報告。株式市場の足元の好感(ねじれ・グリッドロック歓迎)と、AI関連株やイーロン・マスク関連企業(Tesla, SpaceX)の株価急落・監察圧力に着目。 |
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People’s World |
労働組合(AFL-CIO, UAW等)の総力戦、労働者階級の勝利、CPUSAの見解 |
イーロン・マスク氏ら超富裕層の巨額献金(430億円超)を打ち破った労働組合の集票力を強調。CPUSA(米国共産党)幹部の見解を交え、MAGA政治の破綻と労働者の勝利を主張。新議会にPRO Actや医療権利の実現を要求。 |
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ハンギョレ新聞 |
トランプ氏の「超レームダック化」、韓米同盟・外交安保への不透明感 |
38年ぶりのテキサス陥落などを挙げトランプ氏の掌握力低下を指摘。3,500億ドルの対米投資・関税の重荷が残る一方、戦作権移管や原発・ウラン問題で核不拡散重視の民主党議会がブレーキをかける「二重の難題」を分析。 |
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アルジャジーラ/国際報道(ロイター・CNN経由) |
泥沼化するイラン戦争への民衆的拒絶、中東地政学の変動、ネタニヤフ退陣要求 |
2月28日に始まったイラン戦争に対する米国民の「NO」が敗因と指摘。1週間前の総選挙で過半数割れを起こしたイスラエル野党(ゴラン氏、ラピド氏)が、米国の超党派支持を失わせたとしてネタニヤフ首相の辞陣を追撃する構造を報じる。 |
各メディアの報道内容を総合・照合すると、国際社会はトランプ政権の急激な弱体化を、一方的な強権外交の破綻と捉える一方で、新たな「権力の空白」や政策の不透明感として警戒していることが浮き彫りになる。
『しんぶん赤旗』や『People’s World』などの進歩派・社会主義系メディアが草の根運動と労働組合の階級的勝利を捉え、政策転換の好機と位置づける一方、同盟国メディア(『ハンギョレ新聞』等)や大手経済紙(『NYT』等)は、連邦議会の牽制機能強化に伴う立法グリッドロック(膠着状態)や、追い詰められた政権が行政府の単独権限を用いて対外軍事・通商面で過激な暴走へと逃避するリスクを注視している。
トランプ政権をここまでの歴史的完敗へと追い込んだ内政上の構造的要因について、具体的な経済・社会データとともに解明していく。
トランプ「審判」の構造的要因:泥沼のイラン戦争、生活苦、そして腐敗
2024年大統領選挙においてトランプ氏を勝利へと導いた有権者連合が、わずか2年の間に霧散した背景には、有権者の怒りを限界に達させた明確な構造的要因が存在する。
「戦争の終結」と「物価引き下げ」という公約を掲げて発足した第2次トランプ政権であったが、現実にもたらされたのは庶民の営みを破壊する極端な政策の結果であった。
各紙報道をまとめて政権惨敗の3つの主要因を以下に詳述する。
- 無謀な「イラン戦争」とエネルギー価格高騰:2026年2月28日、米国とイスラエルによる先制攻撃で開始された対イラン戦争は、決定的な勝利を得られぬまま泥沼化した。この紛争はホルムズ海峡の物流とエネルギー市場を直撃し、ガソリン価格を全米平均でガロンあたり4.23ドルへと高騰させた。これに伴い、一般世帯では平均1,184ドルの追加燃料コスト負担が発生した。特にアイオワ州などの穀倉地帯では、コンバインを動かす軽油代が「1日あたり1,000ドル(約16万円)」へと倍増し、農家の生活と営農を直撃した。2028年大統領選の有力候補とされるJD・バンス副大統領自身が「われわれが負けた理由は戦争だ」とSNS上で敗因を認め、トランプ大統領もその見解が「ほぼ正しい」と容認せざるを得ない事態に追い込まれた。
- トランプ関税とインフレによる生活苦:トランプ氏が断行した高関税政策と戦争に伴う燃料高は、食料品や日用品の価格を跳ね上げた。生活苦に悲鳴を上げる有権者に対し、トランプ氏が物価高を「ホアックス(でっち上げ)」と一蹴した姿勢が決定的な不信感を呼んだ。ロイター/イプソスの世論調査においてトランプ氏の支持率は過去最低の31%まで落ち込み、支持政党調査でも民主党(47%)が共和党(35%)を12ポイント突き放した。
- 汚職・強権政治とICEによる人権侵害:トランプ氏が就任1年目で暗号資産(仮想通貨)事業、石油株利権、ホワイトハウス宴会場建設などを通じて20億ドル以上の個人利益を得ていた疑惑や、ジャレッド・クシュナー氏の海外投資利権に対する不満が噴出した。さらに、移民税関捜査局(ICE)による暴力的な住宅ガサ入れや強引な強制送還、米国市民を含む死亡事故の発生は市民の激しい怒りを呼び、全米3,000箇所以上で「NO KINGS(王はいらない)」デモが爆発的に展開された。
【トランプ有権者連合崩壊の構造】
[無謀なイラン戦争] + [高関税・インフレ] + [政権の汚職・ICE暴走]
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[生活費・燃料代の高騰 (全米ガソリン$4.23/gal, 農家軽油費$1,000/日)]
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[トランプ支持率 過去最低31%へ急落] ───> [買収的公約・巨額献金の無力化]
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【歴史的「ブルー・ツナミ」の発生】
これらの要因がもたらした民衆の不満は、政権側のあらゆる買収的公約や巨額の資金力を完全に無力化した。
トランプ氏が選挙直前に乱発した「全成人への5,000ドル配当金」「農家への80億ドル支援」「高齢者への90ドル給付」というばらまき公約、さらにはイーロン・マスク氏が投じた2億7,600万〜5億ドル(430億円超)規模の巨額献金も、日々の食費や燃料代の負担、強権政治に苦しむ労働者階級の現実的な怒りの前には全く効力を発揮しなかったのである。
この民衆の怒りを吸い上げ、高い投票率へと結晶させたのが、草の根から立ち上がった左派社会主義運動と労働組合の強力な連帯である。
「赤い波」と草の根の波及:DSA(アメリカ民主社会主義者)と労働運動の歴史的躍進
2026年中間選挙における最大の地殻変動の一つは、二大政党制の枠組みの中で「アメリカ民主社会主義者(DSA)」をはじめとする草の根左派と労働組合が歴史的な躍進を果たし、独自の政治的スペースを切り拓いたことである。
会員数を10万人超へと急拡大させたDSAは、単なる民主党の集票補完勢力ではなく、独自の組織力と「Inside-Outside」戦略を駆使して選挙戦を牽引した。
全米各地で誕生した具体的成果と象徴的な勝利者は以下の通りである。
- アンジー・ニクソン(フロリダ州上院補選):共和党の牙城フロリダ州において、DSA会員のニクソン州下院議員は予備選で16倍の資金差を跳ね返して公認を獲得。国民皆保険(Medicare for All)や富裕層課税、イラン戦争反対を掲げ、元州司法長官のアシュリー・ムーディー氏(共和党)を激しく猛追した。最新世論調査では無党派層で49.3%対35.6%と大幅リードを構築し、全体でも1.9ポイント差まで詰め寄る地殻変動を起こした。
- アブドゥル・エルサイード(ミシガン州上院選勝利):医師である進歩派のエルサイード氏は、全米自動車労働組合(UAW)やUNITE HEREなどの強力な支援を受けた。UAWは10万戸以上の戸別訪問(キャンバス)と50万回の電話作戦を展開。大企業・富裕層課税や国民皆保険を掲げ、米史上初のイスラム教徒の連邦上院議員として初当選を果たした。
- トロイ・ジャクソン(メイン州上院選勝利):元ロガー(木こり)で組合員のジャクソン氏は、当初の民主党公認候補(グラハム・プラットナー氏)が性加害疑惑で辞任したため、僅か101日間の急造キャンペーンで出馬。造船所・製紙工場労働者や教員組合の強力なネットワーク(”cavalry”)を結集し、5期30年にわたり鎮座してきた共和党重鎮スーザン・コリンズ上院議員を破る「巨人退治(Giant Killing)」を達成した。
- ジェームズ・タラリコ(テキサス州上院選勝利):キリスト教の信仰と弱者救済・人権尊重を掲げたタラリコ氏は、トランプ氏が全面支援したパクストン州司法長官を破り、テキサス州で38年ぶりとなる民主党の上院議席を獲得した。
- 都市部におけるDSA首長・地方行政の誕生:首都ワシントンでのジャニーズ・ルイスジョージ氏の市長選勝利をはじめ、ミシガン州アナーバー、ロードアイランド州プロビデンス等でDSA所属・支援の市長が相次いで誕生。ロサンゼルスでのニティヤ・ラマン市議の健闘や2025年のゾーラン・マムダニ氏のニューヨーク市長選勝利に続く、都市部での社会主義的行政の浸透を実証した。
【草の根左派・労働運動の主な勝利モデル】
┌──────────────────────────┬──────────────────────────┬──────────────────────────┐
│ トロイ・ジャクソン │ アブドゥル・エルサイード │ アンジー・ニクソン │
│ (メイン州上院選勝利) │ (ミシガン州上院選勝利) │ (フロリダ州上院で猛追) │
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│・元木こり/労働組合員 │・医師/UAW等が全用展開 │・DSA会員/進歩派 │
│・101日間の奇跡の陣営 │・UAW10万戸訪問・50万電話 │・16倍の資金差を跳ね返す │
│・30年君臨のコリンズ氏撃破│・米史上初のイスラム上院議員│・無党派層で49.3%獲得しリード│
└──────────────────────────┴──────────────────────────┴──────────────────────────┘
この運動の深化を裏付ける世論調査データには、明確な二つの異なる潮流が存在する。
『しんぶん赤旗』が報じた「公共宗教研究所(PRRI)」の全米調査によれば、全米有権者の41%、とりわけ18〜29歳の48%が「資本主義は機能しておらず、社会主義の要素を取り入れるべきだ」と回答した。
一方で、『People’s World』が報じたNBCニュースの出口調査によれば、18〜29歳有権者の33%が自らを明確に「民主社会主義者(democratic socialists)」と自己同定している。
このように、若年層の半数近くが社会主義的要素の導入に肯定的であり、3人に1人が民主社会主義者を自認するという意識変化は、DSAの「Inside-Outside」戦略(民主党予備選の利用と独自の組織基盤の維持)やSeth Ackermanの「党代用体(Party Surrogate)」モデル、Eric Blancの「ダーティ・ブレイク」理論の実践と結びついている。
既存の二大政党政治が見捨ててきた不満層を組織化し、富裕層課税、PRO Act(労働組合結成権利擁護法)、Medicare for All(単一支払者国民皆保険)といった政策を、全米の主要な政治アジェンダへと押し上げたのである。
勝利した新議会とトランプ政権の対峙構造を描く次章へと議論を進める。
連邦議会の勢力図と「超レームダック」トランプ政権の統治限界
2027年1月からスタートする第120期連邦議会において、民主党が上下両院の過半数を掌握したことは、トランプ大統領の任期後半2年間の統治構造を根本から一変させる。
自ら全面支援した候補が全米で相次いで敗北したことでトランプ氏の党内掌握力は失墜し、政権は2年間の任期を残して「超レームダック」状態へと陥った。
『ハンギョレ新聞』、『NYT』、『People’s World』の分析を統合すると、新議会が展開する攻勢と統治限界は以下の4点に集約される。
- 「ミスター・ビートー(拒否権)」化と拒否権覆しの攻防:トランプ氏は民主党主導の法案に対して拒否権(Veto)を連発する構えを見せている。しかし、民主党側も共和党ハト派を取り込んだ拒否権覆し(上下両院で3分の2以上の賛成)を狙うため、政権側の立法推進は完全に麻痺する。
- 強力な調査権と召喚状の発行:下院査察(Oversight)委員会幹部のロバート・ガルシア氏が「弁護士を用意しろ(Lawyer up)」と警告した通り、民主党が委員長職を独占する新議会は、トランプファミリーの暗号資産事業、石油株取引、ジャレッド・クシュナー氏の投資事業、ホワイトハウス宴会場建設資金などの汚職疑惑に対し、公聴会開催や召喚状発行を通じた徹底追及を開始する。
- 予算権(Power of the Purse)を通じた政策阻止:民主党ロー・カンナ下院議員が主張するように、新議会は「ベトナム戦争末期に議会が取った資金遮断(資金絶ち)の手法」を用いて、イラン戦争への追加軍事費を拒否する動きに出る。さらにICE(移民税関捜査局)や国境警備予算の削減・回収(claw back)を断行し、トランプ氏が打ち切ったオバマケア(ACA)補助金の復活を要求する。
- 上院の人事承認権のストップ:上院を民主党が54議席で制したことにより、連邦裁判所判事、閣僚、大使の任命権に強力なストッパーがかかる。連邦最高裁判所で保守派判事に欠員が生じた場合、民主党は右派判事の承認を全面的にブロックし、司法の右傾化にブレーキをかける。
ここで直視すべき構造的リスクは、内政における「チェック&バランスの強化」と、行政府に残された「広範な単独権限」とのギャップである。
内政で予算、人事、法案を完全に阻止されたトランプ氏が、大統領権限(行政命令)で動かせる外交・軍事・関税分野へと逃避し、権力低下を取り戻そうと中東情勢などでより過激なエスカレーションに走る危険性が懸念されている。
この米国内政のグリッドロック(政治的再不能)が、グローバルな地政学リスクにどのような波紋を広げているのかを論じる。
グローバルな地政学への波紋:中東、東アジア、通商政策のゆくえ
国内政治で手足を奪われたトランプ政権の弱体化は、世界各地の紛争地域、同盟関係、そして国際通商体制に対して多角的な影響を及ぼしている。
地域別の具体的な影響分析は以下の通りである。
① 中東情勢(イラン戦争とイスラエル内政の連動)
ロイターおよびアルジャジーラの分析によれば、議会の予算制限と国民的「NO」を受けたトランプ氏は、カタール等の仲介によるイランとの暫定合意(ホルムズ海峡の航行安全確保等)へ舵を切るか、あるいは退任前に「仕上げを済ませる」として地下核施設(ピックアックス山等)への限定攻撃へと暴走するかの岐路に立たされている。
この米国の変動はイスラエル内政と直接連動している。中間選挙の1週間前(10月27日)に行われたイスラエル総選挙でベンヤミン・ネタニヤフ首相率いる右派連合は過半数割れ(53議席)を起こしていた。
米国の結果を受け、野党「民主党」のヤイル・ゴラン党首やヤイル・ラピド氏、ガディ・アイゼンコット氏らは「ネタニヤフは米国の伝統的な超党派の支持を失わせた」として猛烈な退陣要求を展開している。
テルアビブ大学のウディ・ゾマー教授が「次期米議会は歴史上最もイスラエルに批判的な議会になる」と指摘するように、米内政の変化がネタニヤフ政権の崩壊圧力を加速させている。
【中東・イスラエル政治への連動構造】
米中間選挙での反戦「NO」の審判 ───> 民主党主導議会による軍事費資金遮断
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イスラエル野党(ラピド氏・ゴラン氏)「ネタニヤフは米国の超党派支持を破壊した」
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【ネタニヤフ政権の不信任と退陣要求の激化】
② 東アジア・韓米関係
『ハンギョレ新聞』の社説・記事が分析するように、トランプ氏の弱体化は同盟国にとって二重の難題をもたらしている。
トランプ政権が課した3,500億ドル規模の対米投資約束やトランプ関税はそのまま重荷として残る一方、韓国政府が推進してきた「戦時作戦統制権(戦作権)の移管」「原子力潜水艦の導入」「ウラン濃縮・再処理の許可」といった懸念に対し、核不拡散を重視する米民主党主導議会が厳しくブレーキをかける可能性がある。
また、弱体化したトランプ氏に対して北朝鮮の金正恩氏が首脳会談に応じる動機が低下するリスクも指摘されている。
③ 通商政策とグローバル市場
米株式市場(S&P 500が1.6%増、ダウが3%増)は、ワシントンの政治的格差や政策変更の停滞(グリッドロック)を好感して一時上昇した。
しかし通商分野では、関税発動の大統領権限が行政府に集中しているため、新議会が関税撤廃法案を可決してもトランプ氏の拒否権(3分の2の壁)を崩すのは困難である。
このためドイツ機械工業連盟(VDMA)や日本の三井物産などグローバル企業幹部は、不透明な事業環境が継続すると警戒感を崩していない。
「弱体化した内政」と「行政府に担保された強大な外交・軍事権限」のギャップが生む予測不能性が、世界の安全保障環境にいかなる不安定化をもたらすかが注視されている。
まとめ:二大政党制の地殻変動と草の根民衆運動の未来
2026年米中間選挙は、米国政治史における決定的な分水嶺として位置づけられる。本選挙結果が示した総括的要点は以下の3点である。
- トランプ主義(MAGA)と強権政治への構造的拒絶:イーロン・マスク氏の430億円超に及ぶ巨額献金や買収的公約にもかかわらず、生活苦、無謀な戦争、汚職、人権侵害に晒された有権者は、トランプ政治に対して歴史的かつ壊滅的な不信任を突きつけた。
- 草の根の「民主社会主義」と労働運動の不可逆的な定着:学歴断層やエスニシティの変動の中で、DSAや労働組合(UAW、AFL-CIO等)を軸とする民衆運動が、若者や働く人々の不満を吸い上げ、二大政党制の枠組みを内側と外側から変容させる「不可逆的な政治勢力」として定着した。
- メディアの合成分析が示す金権政治に対する民衆の勝利:大手紙『NYT』が捉えた「トランプ時代の終わりの始まり」という現象の真因を、現場に密着した『しんぶん赤旗』や『People’s World』の報道と照合することで、金権政治に対する働く人々や市民の階級的抵抗の勝利が浮き彫りとなった。
2028年大統領選挙に向け「トランプ後の時代」の模索が本格化する中で、新たに成立した民主党多数派の議会と、それを突き動かした草の根運動は、単なるトランプ氏の暴走に対する「防波堤」にとどまっていてはならない。
18〜29歳の半数近くが社会主義的要素の導入を支持する現代のアメリカにおいて、新議会と民衆運動に求められているのは、イラン戦争の即時終結、富裕層・大企業への適正課税、PRO Actの成立による労働者の権利擁護、Medicare for Allの推進といった、「生活と権利を守る真の構造改革」を目に見える形で可視化していくことである。
二大政党制の隙間を抉って噴出した民衆の波は、米国、そして世界の未来をより民主的で平和な方向へと押し進める不可欠な動脈となっている。
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