今日は少し、頭の中を整理しながら国会のお話をさせてくださいね。
遠い雲の上の出来事のようでいて、実はそこで決まることひとつひとつが、巡り巡って、
こうしてお茶をすすっているワタクシの毎日にまで届いてくるものなのです。
令和8年、西暦2026年の2月8日に投開票された衆議院選挙で、日本の政治のバランスがガラリと変わりました。
高市早苗さんという方が率いる自由民主党が、316議席という、途方もない数を手にしたのです。
3分の2を超えるのに必要な数はおよそ310議席と言われておりますから、それをさらに上回った。
ワタクシの若い頃の選挙とはまるで違う、桁違いの勝ち方だと感じます。
けれども政治というのは、片方が強くなれば済むという単純な話ではございません。
参議院のほうでは、与党は過半数すら握れておらないのです。
衆議院と参議院で、こう、ねじれてしまっている。
着物の帯がねじれて、なかなかまっすぐ結べない、あの感じによく似ております。
このねじれを抱えたまま、令和8年2月18日に召集されたのが、第221回特別国会というものでした。
当初の会期末、つまり店じまいの予定日は7月17日。
この日を前にして、重要な法案をめぐる与党と野党の攻防戦が、まさに火花を散らすように繰り広げられることになったのです。
今日はその舞台裏の仕組みを、「チームあかね」が、しっかりと調べてくれたのでそれをもとに、ワタクシなりに、わかりやすく紐解いてみたいと思います。
「チームあかね」の記事はこちらで御座います。この間の国会の流れをしっかりとまとめてくれておりますので、ぜひご覧ください。
『衆議院3分の2の議席と「60日ルール」をめぐる憲法上の力学:第221回特別国会会期末における与野党攻防分析(チームあかね編)』

「奥の手」と、60日という時計の針
まず知っていただきたいのは、衆参がねじれた時に政府と与党が持っている「奥の手」のことです。
日本国憲法の第59条という条文に、衆議院の「再可決」という仕組みが定められております。
衆議院が一度可決した法律の案が、参議院で否決されたり、違う結論になったりしても、
衆議院に出席した議員の3分の2以上が再び賛成すれば、その法律は成立してしまう。
まさに衆議院の「切り札」でございます。
ただし、この切り札を使うにはもうひとつ条件がございます。
それが「60日ルール」と呼ばれるもので、憲法59条の4項に書かれております。
参議院が法律の案を受け取ってから、休会を除いて60日のあいだ結論を出さなければ、
衆議院は「否決したもの」とみなして再可決に進めるのです。
つまり野党が審議も採決もせず知らんぷりを決め込んだとしても、
60日という時間の経過さえ待てば、衆議院は強引に再可決の手続きへ進めてしまう。
時計の針が、じわりじわりと与党の味方をしてくれる仕組みなのです。
けれども、ここに大きな壁がございます。
それが国会の「会期」という、いわば店の営業時間です。
参議院が法律の案を放ったらかしにしたまま、7月17日という当初の会期末を迎えて店じまいになってしまえば、
その法律の案は自動的に廃案、お蔵入りとなってしまいます。
60日という時間を稼ぐには、営業時間そのものを延ばさねばならない。
これが「会期延長」が、必要になってくる理由です。
この時間の壁を乗り越えるために持ち出されるのが、国会法という法律です。
通常の国会の会期延長は1回きりと決まっておりますが、今回のような特別国会の場合は、なんと2回まで延長ができます。
しかも延長をめぐって衆参の意見が割れても、衆議院の判断がそのまま国会の決定になる「衆議院の優越」という強い立場がございます。
つまり与党は参議院の同意など得なくとも、衆議院単独の判断で国会という舞台の寿命を延ばし、
60日ルールから逆算した強行突破の道筋を、自分たちの手で描くことができてしまうのです。
三つの法案と、ひそかな「覚書」
今国会をここまで混乱させた理由は、性格の異なる三つの法案の存在にございます。
ひとつめは、皇室典範の改正案。
結婚された後も女性の皇族の方が皇室に残られること、
そして旧宮家の男系の男子を養子にお迎えすることで、皇族の数を確保しようという内容です。
本来は与党も野党も垣根を越え、静かに、丁寧に合意を積み重ねていくべき議論です。
ふたつめは、衆議院議員の定数を削減する法案。
話し合いの場で1年以内に結論が出なければ、比例代表の議席を45議席、強制的に削ってしまうという内容で、
日本維新の会が「身を切る改革」の核心として提出したものです。
自民党の中にも慎重な意見が根強くあるものの、連立を保つために合意した経緯がございます。
みっつめは、副首都構想に関する法案。
首都直下の大地震のような災害の際に、首都の機能を肩代わりする地域を法律で指定しようというもので、これも維新の看板政策です。
この三つの法案を確実に処理するため、自民党と維新は、皇室典範の改正案を「最優先で審議する」と表向きは合意しながら、
裏では「最大2回の会期延長も含めて、今の国会で確実に成立させる」という覚書を交わしておりました。
自民党の幹部はこの覚書の存在を否定しましたが、情報が漏れ伝わったことで、野党側の対決姿勢は決定的に硬くなってしまったのでございます。
空回りの日々と、議長の仲裁
6月24日、維新が副首都法案を提出。
6月26日には野党欠席のまま委員会付託が議決され、野党は審議拒否の方針を固めます。
6月29日には定数削減法案の審議入りが職権で強行され、野党5党は結束して全面的な審議拒否に転じました。
国会は完全に空回りです。6月30日には皇室典範改正案が閣議決定される一方、
副首都法案の審議も欠席のまま進み、膠着状態は深まるばかりでした。
7月1日、森衆議院議長が与野党の幹事長を呼び、皇室典範の最優先審議と、互いに譲り合う「互譲の精神」での正常化を要請。
これを受けて与党は定数削減法案の採決を見送りました。
ところが7月2日、自民と維新の覚書の存在が発覚し、波紋が広がります。
そして7月3日、中道改革連合の小川淳也代表が与党の姿勢を「政権の一角の趣味だ」と批判する一方、
幹事長同士の会談で、定数削減と副首都の二法案はいったん審議を中断することで一致いたしました。
高市さんの背中と、二つの事情
高市首相は、歴史的な単独3分の2の議席を獲得して政権を始動させました。
財界やアメリカのための積極財政や防衛力強化といった政策を進めるため、
衆議院の圧倒的多数を最大限活かそうというお気持ちなのでしょう。
けれども物事をひとりで抱え込みがちで、周囲との調整を欠くという
ご性格に起因するリスクが、以前から指摘されております。
今回の空転をめぐっても「野党との事前調整を甘く見たのではないか」
という厳しい声が、自民党の内部からさえ上がっているのです。
ワタクシには、この背景に二つの事情が絡んでいるように見えます。
ひとつは維新への「恩義」。
公明党が抜けた連立の穴を維新が埋めたことで、高市さんは首相の椅子を得た経緯があり、看板政策を無下にはできないのです。
もうひとつは、ご自身の疑惑追及からの「逃げ」。
集中審議や党首討論を避け、国会答弁の代わりに秘書の方の
陳述書で済まそうとする、前代未聞の対応が批判を招いております。
憲法63条は首相の国会出席義務を定めておりますのに、これでは誠実とは申せませんね。
これからを見つめて
7月17日の会期末に向け、定数削減と副首都の審議は中断され、皇室典範を優先する方向へ向かっています。
けれどもこれは根本の解決ではなく、一時の休戦にすぎません。
維新はなお「今国会で決着をつける」との構えを崩さず、野党は「完全断念」を求めて一歩も引きません。
3分の2という数の力は、強力な武器であると同時に、強引な運営への批判を呼ぶ両刃の剣です。
話し合いを尊ぶか、数で押し切るか。この決断は、高市政権の命運と、
日本の民主主義のあり方そのものを左右することになるでしょう。
今開いている国会は「特別国会(第221回国会)」です。
2026年2月18日召集、会期は150日(~7月17日まで)とされています。
定数削減、皇室典範改正、副首都構想が終盤国会での攻防ですが、
物価高対策を含む経済政策、政治資金の透明化や政治とカネの問題、防衛政策の見直し、重要論点がたくさんあります。
そして、高市首相の誹謗中傷動画、サナエトークンの疑惑など逃げ切るおつもりなんでしょうか。
会期末が迫る終盤国会は、自民党と維新与党の強権的で横暴な国会運営で、審議そのものが成立しない異常事態です。
与党側は「野党の審議拒否」のせいだとおっしゃいます。
自分たちが議会制民主主義のルールを踏みにじって「数の横暴」で、審議の前提を破壊してきたのに、なんという言い草でしょうか。
その原因と責任は、一方的に物事を押し通そうとする高市政権、与党側にあります。
最後の一句
押し切りて 拒否と呼ぶ声 夏の宵
(おしきりて きょひとよぶこえ なつのよい)
自分たちが押し切っておきながら「拒否」と呼ぶ、その声だけが夏の宵に虚しく響く、という皮肉に仕上げました。



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